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★ベトナムで生き抜く術★

川崎のラブホをリニューアルしていたら、ヤクザに呼びだされた話 2005年 【完全版】

もう10年以上も前、2005年の話です。

川崎のラブホをリニューアル工事していたら、ヤクザに呼び出されました。

その当時を振り替えったドキュメントをお送りします。

あれから、川崎には近づく機会はありません。
ベトナム住まいの僕にとっては、よほどの用事が無い限りはもう行くことのない場所です。(堀の内はまた行きたいですが)
いまだに暴力団の組は存在しているのでしょうか。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

そのとき、おれ達は川崎警察署の刑事課の取調室にいた。

その刑事さんはおれ達に向かって言った。

「あなた達が会った奴はこの中にいる?」

その刑事は極楽トンボの加藤のような容姿。
しかも、その動作は緩みなく力と自信が溢れ、おれ達を安心させていた。
クリアファイルを開いてでてきたのは、ある暴力団の顔写真付の組織図だった。
こんなものがあるのかと驚きつつ、ある男の顔を捜した。

「こいつです!!」

おれと同僚はほぼ同時に同じ人物を指差した。

おれ達はつい二時間前は、暴力団の事務所にいた。

その日は、太陽の日差しのおかげで12月のだというのに、寒さを忘れたような日だった。

ここ一週間おれ達は、ラブホテルの改装工事に追われていた。
そのホテルは、もう15年以上も前に今おれの勤める会社が建てたラブホテルだった。
15年も経てば、風呂やタイルは汚れ、クロスははがれてくる。はっきり言って汚い。

自分ならこんなところでヤリたくない。
まぁ、客斡旋のルートがあるようで客足が途絶えることがないホテルのようだ。
工事前に何度か来たが、昼の12時以降は満室に近い様子だった。
部屋の老朽化で売り上げが落ちているわけではない。
だが、改装することで得るメリットはある。
一つは、新しい客を掴むこと。
もう一つは、料金を上げることできる。
工事期間は約3週間。
最初の1週間は壊すことから始まる。いわゆる解体工事。次の週は設備工事の期間。エアコンや風呂・便器を取り替える。
最後週は床のタイルや壁のクロスを仕上げる期間になる。
そしてホテルで一番大事なのは外見。外から見て綺麗だけど、中に入ると普通でがっくり・・・なんてよくあることだ。
だから、外装の塗装工事も3週間の中にもちろん含まれていた。
実際の工事はもっと複雑に絡み合うわけだが、これ以上説明する必要はないとおもうので省く。

そのホテルは川崎にあった。川崎という街をそれまで自分はあまりよく知らなかった。
けれど、毎日通ってみるととってもコワイ街であることを知った。
そのホテルの周りは、夜になるとアッパーライトで浮かびあがる建物が立ち並ぶラブホ街。
暗くなると東京ではあまり見なくなった売りをする女の人が声をかけてくる。

そして、そこから道を3つ南にいくと有名な堀の内がある。いわゆるソープ街。
何十件もソープランドが並んでいる。そう、風俗街の存在はそのまま暴力団の存在も意味する。
おれ達が工事しているホテルとソープ街の中間地点に暴力団の事務所はあった。
そのときが来るまでそこに行くことになるとは思わなかった。

工事をしていると、一日に3回ほどホテルの前をパトロールが通る。
常に二人組みでパトロールしている。
その人達は制服を着ている。だけど、拳銃ももっていないし帽子もかぶっていない。
その制服は自衛隊のような迷彩服。
かれらは、警察官でも自衛官でもないヤクザ兵隊だった。
彼らは体格がいいわけでもなく、コワイ風貌をしているわけでもない。
むしろガリガリで栄養不足が伺える。
暴力団の下っ端の兵隊はおれらの想像以上に貧乏なのかもしれない。

工事始まってから数日の間は、彼らはただ通り過ぎていくだけの存在だった。

しかし、いつからか、彼らの通る回数が増えていくようになるのだった。

 

会社で一番仲がいい同僚といえば、ほぼ同時期に入社したKだ。

かれは、おれより4つ年上で当時は29歳であった。

地元が近くであったり、育った環境が似ているということもあり気が合う。

タメ口で話、二人で飲み明かすこともしばしばある。

最近は少し太ってきたが、過去ホストをしていたこともあるだけあって、抜けているが端整な顔立ちでなかなかモテる男だ。

しかし、見かけによらず高校時代ボクシングの関東チャンプで、若い頃はなかなか修羅場をくぐってきたらしい。

ホテルの改装はそんな彼とおれと二人で、設計から進めてきたのだった。

来訪者は、10時の休憩中にやってきた。

「監督さん。外で誰か呼んでるよ。迷彩服きてる奴らだけど。」

外で休憩していた職人が、現場事務所までおれたちを呼びにきた。

とうとう来たのだ。事務所内に緊張が走った。

「今行く。」

といったものの、おれと彼は顔を見合わせ苦笑いを浮かべた。

とっても外に出て行きたくない気分満載だ。

暗い建物から外にでると、太陽がまぶしい。

しかしすぐ見慣れた迷彩服の兵隊が目に入った。

あきらかにダサい迷彩服を着た二人組みは顔も野暮ったい。

一人は、背が低くやせていて角刈り。野球少年がそのまま大人になった感じだ。歳はおれと同じくらいだろうか。

もう一人は、背はおれと同じくらいで170前後か、顔はやつれてメガネに真ん中わけはまさに浪人生。

内心、「こいつらならわけねぇ」って思った。

「ちょっと、聞きたいことがあるんですけど。」

意外にも下手にでて話しかけてきた。

「この工事って、うちの事務所の許可とってやってるんですか?」

「いや・・・」

おれ達は言葉に詰まった。

口八丁で嘘をついてごまかしても、しょうがあるまい。

「とってないですね。」

「そうですか。そしたら一度、うちの事務所に来てもらわないと。」

「はぁ。」

おれ達は、気の抜けた返事をした。

それだけ目の前の二人をおれ達は侮っていた。

目の前の二人は迷彩服を着てなければ、ヤクザにもチンピラにも見えない。

「上の者に聞いてみるので、携帯番号教えてもらえますか?」

「・・・・・」

さすがに、こいつらに携帯を教えるのはヤバイ。

それに教える義理もないと思う。なぜ、組に許可をとらないと工事しちゃいけないのか。

しかし、それを口にするのは無意味だろう。

結局、同僚Kの携帯番号を教えた。向こうからまた連絡よこすということになった。

そしてその日の工事も終わり片付けはじめた夕方、Kの携帯が鳴った。

「やっぱり、一度こっちに来てもらわないとダメみたいです。」

 

仕事上、いままでヤクザがらみがなかったわけではない。

渋谷でカラオケBOXを造ってたときも来た。それに、うちの会社は客の半分が元ヤクザだったりする。でも、みんな紳士的で脅しをかけられたことなど一度もない。

そもそも、うちの会社の社長自体堅気の人間に見えない。いかり肩で長身の上おれの二倍もあるかと思われる胴回り、ダブルのスーツを着てセカンドバックを持って歩くとだれもが道を譲るような容貌だ。もうすぐ還暦だというのに、今年に入ってからも、飲みの席でもめた相手をボコボコにしたっていう話を聞いたときは、開いた口が塞がらなかった。

そんな社長だからこういう時は頼りになる。もちろんヤクザの知り合いもいるわけで、いざというときはどうにかしてくれる。

けれど、社長はそんな甘くはない。連絡は角刈りの下っ端ととっていた。「明日の午前中来てもらえますか?」

「わかりました。」

同僚Kはためらうことなく返事をした。社長に報告したのはその電話を切ってからすぐだった。

「とりあえず行って来い。10~20万くらいなら払ってやるから、それで話をつけて来い。」

と苦々しく言っただけであった。

だいたい、社長はそういうことが起きることはわかっていたはずだった。だが、まだ自分が動く状況ではないと考えているのだろう。

ところで、さっきから違和感を覚えていることあった。それは、おれが浮かない気分でいるのにかかわらず、同僚Kが普通にむしろ楽しそうでさえあった。

ああ・・・・、なんとなくわかる気がした。

「ヤクザの事務所いくの楽しみなんだけどw」

やっぱり・・・・。

パンチドランカーめ!!!

おれは行きたくないわい!!

好奇心旺盛でアホな相棒をもったことに嘆きつつ、その言葉で少し気が楽になった。確かに、そんな事務所は普通に生活していたら用がない。

「確かに・・・」

でも、怖いからおれ行かなくていい?とは、言えない。その後、憂鬱な気持ちで帰途についたのはいうまでもない。

次の日、朝からホテルの支配人夫婦が現場を見に来ていた。二人とも60を過ぎているが、おれ達にとても協力的だ。何より気さくで話しやすい夫婦であった。しかし後から聞いた話では、売り上げの一部を横領していたという。工事が終わったらクビになるという噂があり、実際そうなった。今は関係ないことだが。

さて、二人にこれから事務所に挨拶しにいくという話をしたら、それぞれ違う反応をした。

「挨拶なんて行く必要ない!!このホテルだって一度も、奴らをいれたことないんだから。一度、味をしめると奴らは何度もくるよ。だから行く必要ない!」

こんな剣幕で、話す支配人を見たのははじめてであった。確かに、支配人のいうとおりだ。行く必要はないだろう。

「でも、約束してしまったので・・・。」

「そうね、しょうがないわね。お向かいさんも去年工事してたから、そのときどうだったか聞いてきてあげるわよ。」

と、おれ達を元気つけるように言ったは支配人の奥さんだった。向かい側のホテルは去年改装したばかりで、こっちのホテルより明かに見栄えがいい。が、もちろん同じようなことがあったはずだ。

しかし、結局おれ達が出かけるまでにお向かいさんの話は聞くことはできなかった。

そして、

「これもってきなさい!」

と奥さんはどこからか菓子折りを取り出し同僚Kに強引に握らせた。

しかし、この菓子折りの無意味さをおれ達は後で知ることになる。

事務所は、歩いて3分くらいのところにあった。事務所に向かうまでの間、同僚の気持ちは知らないが、おれはこのときほど体が重く感じたことはなかっただろう。そして緊張で体が硬くなっているのも感じていた。

「お菓子やさんのところを左に曲がるとあるらしいよ」

同僚がいう。

なくていいよ!

っと心に思ったが口には出さなかった。

お菓子屋までくると黒塗りの車が数台停まっているのが目に入った。

うわっ・・・・!!

あったよ。

見慣れた迷彩服が外に4人立っている。その後ろには10階建てくらいの白いマンションがそびえ立っている、実際何階建てか数える余裕はなくもう少し低いかもしれない。しかしそれくらいの威圧感を建物から感じていた。そのマンションの左側には2階建ての木造アパートが繋ぐようにして建っている。下っ端はこのアパートに雑魚寝して暮らしているのだろう。この建物を二つ合わせると100人以上生活できる。この4人の迷彩の後ろにはそれだけの人数が控えていることを想像すると足が震えてくる。おれはそれを必死に堪えていた。

同僚のKが携帯で迷彩くんに電話をかけて、到着したことをしらせた。

外でしばらく待つことになった。

よく周りを観察すると黒塗りの車がたくさん停まっている。まさに、映画で観たことあるような景色だ。本当にこれからこのヤクザの事務所に入るのだろうか。同僚は相変わらず、ちょっとワクワクしているような、トボけた顔で突っ立ている。

そうこうしているうちに、まん丸と太り坊主頭でサングラスをかけた、いかにもヤクザっぽい中年のオッサンが現れた。

「おー、来たか。今日はあいにくゴタゴタしてるから、ここで話をしようか」

黒塗りの車がたくさん停まっていた理由は、今日は幹部の集まりかなにかがあるということだろう。事務所に入らなくて済むことにおれは内心ホッとした。

そして、おれたちは支配人の奥さんから渡された菓子折りを渡した。

「菓子折りで済むとおもってんのか?」

と、予想通りの展開。

「オタクら、この地域で工事しているのに、うちに届け出しないってどういうこと?

とりあえず、工事代金の1割を持ってきな」

「1割・・・」

建築工事の粗利の粗利なんて10~15%だ。

1割も払ったら、工事の利益なんて残りやしない。

「そうですか。とりあえず上司と相談してみます」

「おう。必ず持ってこいよ。なにかあればまた携帯に電話しな」

というやり取り、でおれたちは坊主頭のヤクザから開放された。

あー、おわった!

とりあえず、山場が去ったことにおれは安心した。

あとは、本当にヤクザに金を払うべきなのか。社長は、10万~20万くらいなら払うと言ったが、工事代金の1割というと100万以上になる。

一旦、ホテルに戻り、社長に坊主ヤクザのセリフをそのまま伝えた。

「そんなに払えるわけねーだろ!とりあえず、警察に連絡してみろ」

ということで、警察に連絡したところ、

「詳しい話が聞きたいから、すぐに来てください」

と言われた。

刑事課に入るのははじめてだった。

取り調べ室のようなところに入り、しばらく待っていると、若くてイケメンの刑事さんが現れた。

イケメン刑事さんに、さっきまでのヤクザとのやり取りを一通り話した。

その刑事さんはおれ達に向かって言った。

「あなた達が会った奴はこの中にいる?」

その刑事は極楽トンボの加藤のような容姿。

しかも、その動作は緩みなく力と自信が溢れ、おれ達を安心させていた。

クリアファイルを開いてでてきたのは、ある暴力団の顔写真付の組織図だった。

こんなものがあるのかと驚きつつ、ある男の顔を捜した。

「こいつです!!」

おれと同僚はほぼ同時に同じ人物を指差した。

「ああこいつね。」

と言うと、刑事さんはおもむろに電話器に手を伸ばして、電話をかけた。電話先は、ヤクザの事務所らしい。

なんだ、このホットライン。

警察とヤクザは簡単につながっている。

その時は、まんまる丸坊主ヤクザに連絡つかなかったが、

「二度とおれらに関わらないように、伝える」

ということで、話が終わった。

意外と簡単に解決したことに信じられない思いだった。

その後も工事は2週間ほど続いていた。

おれは違う現場がはじまったから、あまりそのホテルに行く機会はなかった。相変わらず、迷彩服の兵隊たちの巡回は続いていた。

それでも、ヤクザからの連絡は2度となかった。

工事完了近くのある日、おれはまたそのホテルに行くことがあった。

同僚曰く、ヤクザからの連絡は無いが、ホテルから川崎駅に戻る間、何度も車で付け回されているらしい。

この川崎のホテル街は、未だに外国人のタチンボが存在する。ソープ街もすぐ近くにある。そして、何百人というヤクザが存在している。とても特殊な街だ。

たまたま、無事に仕事を終えることが出来たが、運が良かっただけなのかもしれない。ちなみに、その数年後ゼネコンのマニュアルを手に入れて読んだら、

「ヤクザに呼び出されても事務所に行っては行けない」

と書いてあった。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

もしよければ、3年後のお話にもお付き合い下さい。

note.mu

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