チャンパ建築の魅力

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北はフエ、南はファンティエットまで遺るチャンパ遺跡の分布地図

ベトナム独特の歴史的宗教建築としては、2種類が存在します。
1つ目は、中国の都城建築や寺院建築を手本とした建築。
2つ目は、すでになきチャンパ王国が遺した組積建築。
いまでもベトナム住宅建築は、鉄筋コンクリートと組積レンガを組み合わせた構法が主流です。
現代のベトナム建築は、チャンパ王国時代から伝わる組積技術が現代に活かされているといってもよいでしょう。
チャンパ建築を知ることで、いまのベトナム建築の見方が変わってきます。今回は、そんなチャンパ建築の特徴を紹介したいと思います。

現在遺るチャンパ建築は組積造

ベトナムのチャム美術史家チャン・キ・フォンによると
「チャム族のレンガ建築の遺跡はほとんどが宗教上の建造物で、北はガン峠からファンティエットにいたる中部ベトナムの沿岸地域に点在している。7世紀から17世紀にかけて建築されたもので、遺された碑文によれば、7世紀以前に建立されたものは木造だった。しかし、戦争によってすべて焼かれてしまった。このあと、レンガ、砂岩づくりの建造が行われた。」

山岳地帯の多いベトナム中部では、住宅の建材としては木材が使用されていました。
しかし、神を祀る建築としての永久性を保つために、組積建築が主流となっていったようです。
伝統的なチャムの塔は正方形で、多層で曲線のピラミッドから成ります。
塔の各コーナーには両手が上げて塔の屋根を支える神聖なガルーダが彫刻されている遺跡もあります。
当時のチャム民族の宗教的建築の様式は、華麗ですが装飾がうるさくなく、各々が重層的なアーチが収まり、先が撥ね上がり槍の形になり強い印象を作ります。

ビンディン遺跡群 銀塔 

ビンディン遺跡群 銀塔 : チャム建築はカンボジアのアンコール、ジャワのボロブドール、ビルマのバガンのような壮大な建造物はないが、優美で詩的な形態をもっています。

また、チャンパ建築の組積造の特徴としては、「迫りだし構造」がみられることです。
「迫りだし構造」とは上層のもの下層のものよりも少しづつずらして積み上げて、内部空間を構成する架構をつくる構造です。
わかりやすくいえばピラミッドのような構造で、屋根を作っているということです。

現在チャンパ遺跡は、少しずつ修復がすすめめられています。
1000年以上前に建てられた組積建築が、不完全な形であれ現代に残っていたということは、ベトナム中南部における地震の少なさを証明しているようです。

チャンパ建築の世界観

象牙塔 ズーンロン遺跡

象牙塔(ズーンロン遺跡):尖塔は須弥山を象徴しています。

「チャムの建築概念はインドの影響をうけている。寺院の総合的な配置は、伽藍と呼ばれるたくさんの小さな塔に囲まれ、付属の建築物、壁に囲まれている。寺院は聖なるものへ捧げられた、聖なる宇宙の世界を象徴している。伽藍の堂々とした正面は東向きで朝日に向いているが、ミーソンだけは東西両方を向いている。塔は祭壇を表し、塔の屋根は聖なる山(須弥山=インド世界の中心にそびえる聖なる山)の頂上を象徴している。」チャム美術史家チャン・キ・フォン

かつて存在したチャンパ王国は、インドシナ半島における最東端のインド文化国家でした。
チャンパ王国が反映していた土地は、現在全てベトナム国土の一部となっています。
ベトナムは、東南アジアにおいて中国の世界観を持つ唯一の国ですが、ベトナム中部以南はチャンパやクメールの文化が交わりベトナム独特の文化圏となっています。
方言や人間性が北部と南部で異なるのは、ベトナム戦争時代に別れていたためと思われがちですが、ベトナム中部以南はもともとあった世界観が違うため地域がベトナム化しつつも、遺伝子や文化が今にも残っているのでしょう。

ベトナムに現存するチャンパ王国の遺跡群

中国資料によると、チャンパ王国(林邑)が出現したのは192年と言われています。
2世紀〜8世紀までつづいた林邑は、ベトナム中部フエを中心とした国家でした。
4世紀にバドラヴァルマン王が現れダナンの南方チャキエウに首都を置きました。その西にミーソン遺跡群があります。
10世紀にはいると独立したベトナムの南進により、少しずつ首都を南へ移動していきます。そのため、ベトナム中部に遺る遺跡が古く、南部に遺る遺跡が新しい傾向がみられます。(例外もあります)

最盛期は、4つの地域に分かれていました。
北から、アマラヴァティ/ヴィジャヤ/カウターラ/パラドゥンガ

  1. 林邑時代の中心地アマラヴァティは、ミーソン遺跡およびビンディン遺跡群
  2. 10世紀に栄えたヴィジャヤは、クアンナム遺跡群
  3. カウターラは、ポーナガル遺跡が遺るニャチャンを中心としたエリア
  4. パラドゥンガは、ニャチャンからファンティエットのエリア

チャンパ遺産の一番の見どころは、70にものぼる塔が建つ世界遺産としても有名なミーソン遺跡です。しかし、ミーソン建築で一番美しいと言われたA1の塔はアメリカ軍の爆撃により破壊されてしまいました。それでも、聖なる山の麓に巨大な敷地に建てられた建築群は見ごたえがあります。

ミーソン遺跡群

多くの観光客が訪れる世界遺産ミーソン遺跡群

他のクアンナム遺跡群やビンディン遺跡群は、主祠堂を中心に2〜3塔が遺るのみです。
10世紀から14世紀にかけて建てられたニャチャンのポーナガル塔は、高台に立ち美しい塔がいくつか建つ美しい観光地として人々を呼び寄せています。

ポーナガル塔

美しく修復が追えたポーナガル塔 優雅な装飾が美しい

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