日本人男性がベトナム人女性の家族とはじめて対面した話

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その日は、一番下の娘が今の彼氏を初めて家に連れてくると言う。
彼女は以前にも当時の彼氏を家に連れてきたことは何度もあった。
しかし、今回ほど家族がその彼氏に対して警戒と興味を持っていたことは無かっただろう。
娘も今年で30歳。そろそろ結婚して欲しいというのが家族全員の意見だ。
彼女自身も今年か来年には結婚する気でいる。
今日来る彼=結婚相手だ。
家族が興味を示さない訳がない。
そして、もう一つ訳があった。
それは、彼が外国人ということだ。
外国人が多く住むサイゴンならまだしも、
サイゴンから1時間離れたこの街で外国人と交際する確率は低い。
ベトナムは長く外国人によって蹂躙されてきた国だ。
金目当てで外国人と付き合うのならまだしも、
娘は純粋に彼のことを愛しているという。
どうしてこうなってしまったのか。家族は不思議に思う。
また、家族の一番の不安は娘が彼と結婚して不幸になること。
外国人ということは、いつかは彼の故郷に帰ってしまうかもしれない。
もしくは、娘が連れて行かれてしまう。
家族のつながりが非常に強いこの国では、
離れてしまうことに不安を感じる。
母としては、彼が今後どういうつもりでベトナムにいるのか確認しておきたい。
もし日本に帰るつもりなら、結婚をさせてはならない。
その家族の家は、彼らが経営している結婚式場と繋がっていた。
国道沿いにあるその結婚式場は土日には何百人もの人が集まる。
サイゴンと比べてホテルやレストランが少ないこの街では、
結婚式場の経営だけで十分の収入がある。
むしろレストランのように常時人を置いておく必要もないため無駄も少ない。
家はそれほど綺麗ではないが、テレビや携帯電話、
バイクなどどれも最新のものを所有している。
この街では裕福な部類に入る家庭であろう。
夕方の6時頃、娘の彼氏は黒くて古いベスパに乗ってやってきた。
彼が住んでいるのはサイゴンだ。
彼の家からここまでは1時間かかる。
わざわざバイクで来たというのには好印象を受けた。
娘の2歳年上だが、前髪が少し後退気味だ。
お腹がでていて特別容姿がいいとは言えない。
服装は白いYシャツとジーンズに革靴、ちゃんと手土産も持ってきてる。
しかしみんなラフな部屋着を来ているのに比べて場違いな格好だった。
彼はベトナム語が少しわかるようだが、少し挨拶をかわしただけだ。
質問をしてもなかなか理解できず笑ってる。
彼から発した言葉も少なかった。緊張しているのかもしれない。
しかし、外国人の話すベトナム語はわかりずらい。
だが、なぜ娘が彼を愛しているのかなんとなく理解できた。
男前と言える顔ではないが、笑うと眼が輝いてなんとなく可愛らしい。
彼は日本人だった。
娘と彼が出会ったのは、娘が働く会社の中だ。
娘は元々彼のことは良く知らず興味もなかった。
しかし彼は、だいぶ前から彼女のことを気に入っていたらしい。
メールの交換から始まったが、はじめ彼女はとても警戒していた。
彼には他に恋人がいるという噂があり信用が出来なかったからだ。
しかし、メールを交換し続け彼の誠意が彼女に伝わった。
そしていつの間にか娘も彼を想うようになった。
メールを始めたのはもう半年以上前だ。
彼にしてみたらようやくここまでたどり着いたという感じだろう。
彼にしてみても彼女の家に行くにあたり不安はあった。
まず第一に言葉の問題だ。
ベトナムに来てまだ2年たったばかりの彼にとって、
ベトナム語はまだまだ自信がない。
彼女とは意思疎通が出来るが他の人とは難しい。
それを彼女の家族はどう思うだろうか。
特に母親は受け入れてくれるだろうか。
家族との対面というのはお互いに不安が付きまとうものだ。
しかし、結婚を考えているのであれば通らなければならない道だ。
食事の時には家族が皆顔を揃えることになった。
母、姉とその夫と子ども2人、兄、娘とその彼氏
今後もこの顔ぶれが集うことが続くのだろうか。
日本人がどうやってこのベトナムの家庭に溶け込んでいくのだろうか。
それとも、やはり無理なのだろうか。
国際結婚というのは型がない。
結婚後の軌跡は人それぞれだ。
その分未来を見据えるのは難しい。
彼らが幸せになるためには、人より少しの努力が必要なのかもしれない。

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